大学時代、知人から『大正野郎』という漫画を借りた。
当時の私は主人公によく似た男性に片思いをしていた。
今とは違う時代にやたらとシンパシーを感じる姿勢も似ていた。
私は一度、彼に好きだと気持ちを伝えたが、「自分は芸術一本で生きるので色恋沙汰にかかわる気は無い」ということを言われ、断られた。
私は、自分が俗っぽさ満開の恥ずかしい人間に思えて恥ずかしかった。
その後も私と彼はそれまで通りに会ってはいたが、芸術至上主義(というのだろうか)の彼は、彼の仲間たちと私を比較し、人生の目的(や、特定の作品や人物に対する強烈な執着)を持たない私を嘆くようなことが数回あった。
私はそういう浮世離れした感覚に染まるなんてまっぴらだし仲間内で褒めあうなんてなんか嫌だと思ったが、私がくだらないのは事実だし、何より私はまだ彼に魅力を感じていたので、そういった言葉を無視できずに抱え込んで勝手に悩んでいた。

私が告白してから約一年半後、その彼は、『大正野郎』のヒロインのように、どんなくだらん自慢話にもにこにこと相槌がうてる、非常に抑制のきいた、それでいて芯の通った美少女に告白し玉砕していた。

それを美少女が「すみません」と遠慮がちに私に告げた時、みんな、けっこう好き勝手に生きているのかもしれない、と思った。
私も含めて。
そして、なぜ自分がもてないのか、ちょっと分かった気がした。

コメント

nophoto
snow
2007年3月22日5:32

お元気ですか。
今度その美少女を紹介して下さい。
私が救います。

よしだ
よしだ
2007年3月23日12:00

実は自己推薦の方はごろごろいるんですけどね。
困った、困った。

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